
さて何かと話題の 『
APPLESEED XIII』(アップルシード・サーティーン)、6月3日からネット配信がスタートしましたね。
全13話のうち1話目は無料ですので、未だ観てない方は是非観てください(ネタ話のためにも)。
この13話とは別に劇場でもリミックス版の前後編が公開されます。
1〜7話を再構成した 『
遺言篇』(6月13日公開) と、8〜13話を再構成した 『
預言篇』(10月24日)。
そして先日6日に 『遺言篇』 の試写会が行われたので観てきました。
その前に・・・
ネットで1話をご覧になった方、言いたい事は大体判ります。
「こりゃひどい」 と。
本来視聴者の心を掴むために一番品質を高めなくてはいけない第1話、それが話はゴチャゴチャ、CGはムチャクチャ、全体的なトーンはまるでNHK特集を観ているかのよう。
原作アップルシードのストーリー背景は多少複雑です。
A1) 世界大戦で各国のインフラは無力化
A2) 総合管理局が大戦前から理想国家「オリュンポス」を建設
A3) 思想統制のためにクローン人間「バイオロイド」を生み出し不安定な人々を理想に導く
このような世界情勢の下で、
B1) デュナンとブリは共に戦地で行動
B2) ブリが爆弾事件で全身サイボーグ化
B3) 大戦終結後にバイオロイド・ヒトミにより二人はオリュンポスに収容
という経緯があってオリュンポスのESWATにいる主人公二人。(詳しくは以前の特集記事をみてね!)
これらがまったく解説されない状態で無闇に回想シーンとしてカットインしてくるので、アップルシードを知らない人は置いてけぼりの状態です。
3DCGに関して、本作は各13話を全て異なるCG制作会社が担当しています。演出・効果含めて。
第1話はダイナモ・ピクチャーズです。
実際の制作の流れとしては、
人物のモデルや背景素材などは全て制作元のジーニーズが用意し、それを各話毎の担当制作会社に丸投げするという状況のようです。
関係者の話を聞く限りでは、各関係会社のやりとり(素材待ちや工数・費用交渉など)で無駄に時間が費やされ、
映像のクオリティアップには時間が割かれていない印象です。 まぁ、その結果があの第1話の映像ですからね。
全体的なトーンについて、本作は Conisch が主題歌・音楽を担当しています。 どちらかというとクラシックやオペラ調で、雄大で物静かな音楽が多いようです。
しかし果たしてそれがアップルシードの世界観に合致するかどうか。
劇中にはギリシャ神話などに由来する壁画や彫刻が多く登場します。
神秘的なトーンを醸し出すのは良いのですが、NHK特集や環境ビデオのノリでアップルシードを演出しようとするのは間違いなのでは。
過去の劇場版 APPLESEED(2004年)での BOOM BOOM SATELLITES の曲がもたらした演出効果とは間逆のようです。
(参考動画)
というところで。
話を劇場版リミックス 『遺言篇』 に戻しますと・・・
試写会で実際に観てきた感想としては 「ストーリーは90分枠用に判り易くなっている」 に尽きるでしょうか。
ネットで第1話を観た時の、話がゴチャゴチャな印象はあまり感じられませんでした。
3DCGについては改善の跡は見られませんでした。 制作会社が異なる1〜7話を1本の劇場版にまとめていることで、劇中のCGの質感に統一感がなく逆に見づらくなっています。
また所々でキャラのみ表示コマ数が落ちる箇所が見られました。 単なる処理落ちなのか、セルアニメの秒間24コマを狙ったワザトの演出なのか。 後者なら全編通してやってもらいたいですけどね(笑)
そして劇場版にも13話版にも言えるのですが、バンクを多用しすぎで作中に何度も気分がダレてしまいます。
バンクとはヒーローモノの変身シーンのように何度も多用されるシーンのことです。まぁ多用するからバンクなのでしょうが(苦笑)、回想シーン・壁画・彫刻これらが表立った意味も無く何度も何度も何度も何度も繰り返しカットインしてきます。
まるで尺稼ぎかコストダウンを狙ってるかのように。
(ちなみに壁画に関しての記事はこちら)
特にギリシャ神話の英雄ヘラクレスの12の功績をモチーフにした彫像は幾度となく出てきます。
関係者の話では、この12彫像の3Dモデリングを制作会社に依頼した結果、ズームアップに耐えられる程に完成度が高いモノが出来上がったという事なので、
恐らく 「もったいない」 「いいデキだから何度も登場させちゃえ」 みたいなノリではないかと邪心してしまいます。
時間が限られている映像作品を仕上げる過程であってはならないんですけどね。
(C)2011 士郎正宗/青心社・「アップルシードXIII」製作委員会
まぁ、そんな感じで結論としましては、
- アップルシードを知らない方は、細かな背景設定が把握できないまでも 「映画としては普通に面白かった」
- 士郎正宗の古くからのファンで原作命の方は 「主役二人のキャラも違うし原作レイプだ!」
- 3DCGのクオリティに目が行く方は 「これは学生の卒業作品ですか?MMDの方がマシ!」
といった感想を持つのではと思います。
ポジティブに捕らえると万人向けのエンタテインメントに(ギリギリ)仕上がってます。
ネガティブに観ると別にアップルシードでなくてもよく、単なるCG会社のマスターベーション作品です。
さて、あなたはどういう感想を持つでしょうか。
ちなみにこのリミックス劇場版は、劇場公開のみでメディアにはならず、セルやレンタルされないようです。 ネット配信での13話はストーリーが把握しきれない感があるので、その前に劇場版を観ることをオススメします。 全国で3館でしか上映されませんが、なんとかして(笑)観てみてください。
以下はちょっとしたネタです。
劇中には、12個の穴が開いたシリンダーをヘビがくわえているモチーフが登場します。
第1話の最後では、その穴の一つに銃弾を装てんするシーンが出てきます。
そして1〜7話をまとめた劇場版の最後では・・・
穴は12個、本作は13話。 さて、最終話では・・・?
(C)2011 士郎正宗/青心社・「アップルシードXIII」製作委員会
さらにネタ。
作中のデュナン、まゆげが濃過ぎですよね。 原作のデュナンはまゆげ濃くないんですよ。
でもこの顔、士郎正宗画風・・・どこかで見たような・・・あ、攻殻機動隊の原作1巻に出てきた看護婦さん、包田那珠美(くるたん)だ!(笑)
(C)2011 士郎正宗/青心社・「アップルシードXIII」製作委員会
(C)1991 士郎正宗/講談社
posted by sTwo at 19:05
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